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名簿業者へ [雑感]

 人の精神状態は常に一定というわけではない。当然のことだ。したがって、いつもは気にしないことであっても、時として不意に衝撃を受けてしまうこともある。

 名簿業者も名簿を購入して商売に用いる会社も、真っ当な業務だとはまったく思わないが、それらの業務の存在を多少は受け入れてもいいから、ひとつだけ配慮して貰いたいことがある。
 名簿には名前と電話番号の他に、独身か既婚かという項目を添えて欲しい。
 至極当然のように、「奥様はご在宅でしょうか?」と問われても、こちらの状況をいちいち説明する義務はないから黙って切るか、乱暴に叩き切るしかない。場合によってはこちらの名と番号をどうやって入手したのかとねちねち聞いた挙げ句にその無礼さを詰ることもあるが、そんな余裕と元気があるときばかりではない。たいていは黙って叩き切る。
 そして、ごく稀に、どうしようもない悲哀に襲われる。これは暴力だ。
 まったく見ず知らずの赤の他人から唐突に差し向けられる暴力である。
 妻はまだ霊安室から戻っていません、とか、昨年実家に帰ったきり戻ってきませんのでそちらの番号をお教えしましょうか、などと言って相手がとう反応するか楽しむ余裕があればいいのだが、もちろんないから腹立たしさと悲哀を抱えるしかない。
 だからせめて、独身用と既婚用の名簿に分けて、それに応じた会社に売るとか、そういった配慮をしてくれることを切に望む。

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